報告者:水野修次郎
9月16日、17日と大阪でグループワークのワークショップを実施しました。
講師には、Dr. Kim Asner-Self(南イリノイ大学)とDr. Julia Champ(Walden 大学)の2先生をアメリカから招聘しました。通訳は三好真博士です。三好博士は、南イリノイ大学で招聘した2講師の下でコンフリクト中心理論(Focal Conflict Theory)によるグループワークを学び、セラピーで実際に活用した経験があります。
写真はキム先生と三好博士がグループリーダーの役割について説明しているところです。
1)グループワークの目的によるタイプ分け
次の図は、グループワークには大きく4つのタイプがあります。
- タスクグループ:ある目的を達成するために結成されたグループ活動がこれに含まれます。
例、ある特定の研究や論文を書くために結成されたグループ、あるプロジェクトを実施するため
のグループ、学級会で文化祭のために結成されたグループなど。
- 心理教育グループ:教育が主目標になっているグループワーク。例えば、就職のサポート目的としたピアグループ、就職についての心理教育がその目的になるグループ活動がこれに当たります。
・カウンセリング・グループ:何らかの発達に関係する課題を共通にもつグループワークです。
不登校者のグループ、グリ―プのピアサポート、子育てグループなどが考えられます。
・心理療法グループは、どちらかというと重篤なメンタルヘルスを扱うグループ活動です。
アルコール依存症、DV被害者、トラウマグループ、摂食障害、人格障害、統合失調症などの
心理療法グループ活動が考えられます。
2)どのグループタイプであってもグループ発達プロセスは同じです。
グループ参加の初期段階では、活動への参加の程度が問われます。いやいや参加したのか、希望して参加したのか、グループ活動に期待しているのか、それとも暇なので参加したのか、参加のグループへの期待や参加の動機がさまざまです。
参加の問題が解決すると、グループのメンバー同士、あるいはリーダーやファッシリテーターに対して、対立が表れてきます。メンバーは、気持ちを隠さないで、希望や不安を表明するように促されます。
やがて、グループ内での規範やルールが設定されます。黙っているのが規範となるグループもあります。表面上の和やかさを求めるグループも生じます。あるいは、対立することによって、本心を打ち明け、理解を深めるというグループ文化を構成することも可能になります。
規範が設定されると、グループは実際に活動するようになり、交流が深まり、お互いの理解も深まります。
最後の課題は、グループをどのように終了させるかです。ある人は達成感があるでしょうが、終結した後に引きこもりになる人もいます。活動が終了することで、所属するグループを喪失する人もいます。
3)グループ発達段階の中核となるコンフリクト
参加の初期段階では、不安が中核となるコンフリクトです。まわりの人が賢く思われて、こんなことを発言すると何と思われるか不安になります。あるいは、参加者を傷つけるという恐れを感じる人もいます。思っていることを率直に発言するには勇気が必要です。
次に来るのは依存です。グループリーダーに依存して、上手にファッシリテートしてもらえばグループ活動がうまく行くと思い、リーダーに依存します。
依存してもグループが生産的でなく、何もしていないと思うと、リーダーに挑戦します。例えば、「リーダーは素人で経験がないので、意味のあるグループ活動を促進することができません」とか「グループで何をするのかわかるように指示してください」などとリーダーの権威に挑戦してきます。
次に生じる中核となるコンフリクトは、個性の発揮です。グループのメンバーがそれぞれ個性を発揮するようになります。つまり、他者との違いを際立たせることが課題となります。
そして、グループメンバーが親密度を高めると次のコンフリクトが生まれます。各自がどの程度親密なるかを模索します。親密になり過ぎると不安が高くなる人もいます。ところが、どこまでも親密になろうとするメンバーもいます。
グループ活動には、ある期間が過ぎたら活動を終了するという宿命がつきものです。どのように終結するがコンフリクトなります。つまり、喪失と再び孤立感を味わうのではというコンフリクトが待っています。
4)コンフリクトの解決方法
中心となるコンフリクトを解決する方法は2つあります。1つ目は、よくする方法で限定的な解決策です。その場の雰囲気を変えるアイスブレーキングです。冗談、話題を変える、ふざけるなどの手取り速く解決する方法です。何も意見を言わないで、その場をしのぐのもこの限定的な解決方法です。
成長を可能にする解決策は、具体的に課題に取り組もうとする解決方法です。
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FTCをさらに学びたい人は、William B. Kline著 Interactive Counseling and Therapy. Merrill Prentice Hall, 2003年を参照にしてください。詳細について出版する計画はありますが、未定です。
最後に、アメリカではグループ療法が個人面接より臨床現場では多く見受けられます。その理由は、個人の心理問題も対人関係も問題も同時に扱えるグループワークはとても効果が高く、経済的にも効率がいいという利点があるからでしょう。
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